emotional
良い放課後だった。
教室で軽く課題を済ませ、ミーティングのみの部活を終えてきた友人のすだちと合流して美術室へ。
1,2年が騒がしく活動するなか、彫刻に向かってデッサンをするのは、美術部元部長のleaf君。
私は座って倫理の勉強、すだちはレンガブロックのデッサンを始めた。
美術室に来るのは初めてだ。
前々からすだちを通じて来ようとは思っていたが、やっとそれが実現したのが今日だった。
残念ながらleaf君は三者面談でほとんどいなかったが、交わしたほんの少しの会話も、自分的には、すごく、いい感じだった(?)
帰りに昇降口でフラマンに会った。演劇部の同期で家の方向が同じ男子だ。
駐輪場まで来て、彼がチャリなのを確認した。
「一緒帰ろ!」
私の喉風邪は治っていない。結構、ガラガラした。
校門の手前で先生にウザ絡みされつつすだちにバイバイし、自転車を漕いだ。
3送会の話、勉強の話、体調の話。
私の家まではおおむね川沿いの一本道で、フラマンの家はその一本道の4分の1くらいのところにあるため、すぐに着く。
「帰る?」
「いや、送ってくよ」
「やったあ、ありがとう」
川はちょうど夕陽を淹れるところだった。
フラマンはロマンチストだ。
私は彼の前でわざと風情のない喋り方をする。自分が浸りすぎてしまうのが怖いから。
後輩の話、先生の話、夕陽の話。
日没には雲が無い方が好きな私と、チラ見えする方が好きなフラマン。(ちょっときもいと思ったけど言わなかった)
落ちるの早いね、とか言いながら、メロスを想起した。
夕焼け空を4階から見たい私と地上で見たいフラマン。理由を言うと、ちゃんと理論づけて説明できるのすげえ、って。
文系ですから、なんて言いながら、浸ってないからね、とも思う。ロマンチストじゃなくてごめんね、という意味だ。
私の家に着くと、いつもすこーしお喋りして帰る。
部活後、星空を眺めながら1時間くらい話したこともあったし、吹雪の中お弁当を持たせていたのを思い出して追いかけ走ったこともあった。
今日は割と早く私が切り上げた。
また明日、ありがとう、じゃあね。何回も言った別れの言葉。
家に入ろうとすると、曲がり角から名前を呼ぶ声。なに?と返すと
「もう、ない!」
エモくない私は、一瞬、一緒に帰る機会が無いのかと思った。そして、エモくない私は、
「え〜すごーい、はや〜〜い!」
と返した。
エモい私はなんて返してたのかな。